ストーマ周囲皮膚の合併症の影響

軽いストーマ周囲皮膚の合併症 (PSC) であっても、ストーマ保有者にさまざまな悪影響がもたらされる可能性があります。ここでは、こうした問題とその対処方法や予防策について紹介します。

The Impact of Skin Complications

ストーマ周囲の皮膚の合併症が及ぼす影響。

ストーマ周囲の皮膚は初期段階では健康ですが、常に健康であるとは限りません。皮膚の問題を引き起こす要因はさまざまです。これらの問題は、ストーマ周囲皮膚の合併症、または PSC と呼ばれ、ストーマ保有者の人生に影響を与える可能性が高いのです。

PSC の程度には軽度、中度、重度があります。軽度の場合、皮膚は無傷ですが発赤、そう痒(かゆみ)、不快感などがあります。重度の場合、皮膚は損傷し、浸軟、潰瘍、痛み、出血などが見られます。しかし軽度な PSC でも、以下のケースに当てはまる場合があります。

炎症および痛み

ストーマ周囲の皮膚が傷ついている場合、ひりひりします。ストーマ装具の面板を炎症部分の上に貼付しなければならないため、ストーマ周囲の皮膚トラブルは治療が難しいことがあります。

漏れが原因の PSC の場合、発赤が進んで荒れた皮膚が損傷し、湿潤または出血するおそれがあります。これはかなり強い痛みを伴います。回腸ストーマ造設術を受けた患者は、この症状が発生するリスクが非常に高いといわれています。回腸ストーマの排泄物には消化酵素が多く含まれることが原因です。ただし、ストーマの種類にかかわらず、ストーマや腹壁の形状の変化によって面板が合わなくなり、漏れを引き起こすこともあります。

漏れのサイクル

ストーマの排泄物は皮膚にダメージを与え、皮膚保護剤をしっかり密着させることが難しくなります。面板がストーマ周囲皮膚に密着していないと漏れが生じ、粘着力が低下すると漏れや皮膚へのダメージをさらに悪化させてしまいます。いずれの場合も面板を頻繁に交換することになるため、皮膚剥離の原因となる可能性があります。このような悪循環に陥ると、重度のPSCの治癒はより難しくなります。

ストーマ保有者の感情にマイナスの効果

軽度のPSCでも暮らしに直結するため、ストーマ保有者の安心感にマイナスの作用をもたらす可能性があります。PSC は、漏れに対するおそれ、生活の質が低下しているという負の感情が生じる原因となります。そうなると引きこもったり、以前は楽しんでいた活動への参加を控えたりすることがあります。

医療費や入院費の負担増

PSCが発症すると、健康保険や自己負担額の範囲によってストーマ保有者に経済的な負担がかかります。ストーマ造設術後の皮膚トラブルが高額治療費の一因となる、という研究結果もあります。また、費用だけでなく入院期間が長期化する要因のひとつともいわれます。

ある治験*では異なるタイプのストーマ造設術を受けた患者に対し、4年間にわたって医療費、入院期間、再入院についての調査を行いました。その結果、PSCを併発していない患者と比較すると、PSC を併発した患者には以下の点が見られました。

  • 120 日間の医療費の中央値は、50,000ドル高い
  • 初期入院期間は 54% 長い
  • 再入院率が高い

 

生活の質の低下

医療経済学者が生活の質を測定するため、健康効用値について患者に調査を行ったところ、ストーマ周囲の皮膚が健康な患者はストーマを保有していない患者と同等の安心感を抱いていることがわかりました。

一方、ストーマ周囲の皮膚に問題がある場合、自己申告による生活の質は低下し、PSC が悪化するにつれ、他の重度な医療問題を抱える患者と同じ順位付けになります。この調査で、PSC がストーマ保有者の生活の質に重大な影響を及ぼすことが明らかになりました。

皮膚の健康は保てる

PSC の発症は珍しくありませんが、自分自身で皮膚の健康を保つことは可能です。お勧めは、健康な皮膚をサポートするヒトの皮膚の天然成分セラミドが配合された製品を日々のスキン ケア に使用すること。セラミドはストーマ周囲の皮膚に良い影響を与えることがわかっています。

医療従事者からストーマ周囲の皮膚の健康維持について学ぶこともできます。PSC が発生した場合は速やかにストーマケア看護師に連絡してください。

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*Taneja, C.、Netsch, D.、Rolstad, BZ.、Inglese, G.、Lamerato, L.、Oster, G.、Clinicial and Economic Burden of Peristomal Skin Complications in Patients with Recent Ostomies JWOCN 2017 COL. 44 (最近ストーマ造設術を受けた患者のストーマ周囲の皮膚合併症の臨床的および経済的負担)、No. 4 ページ 350-357。